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【ニット帽企画・第5回 (前編)】その帽子は、ひとりの手でつくられていました。

2026.09.04

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これまでの企画で、素材のこと、色のこと、そしてサイズのことをお話ししてきました。前回は「3サイズではなく4サイズにしました」というご報告と、生産確認用のサンプルが届いていい感じに仕上がってきた、というところまで。

そのサンプルを、そして本番のニット帽を、実際につくってくださっている東大阪の工場へ行ってきました。しかも「完成したもの」ではなく、まさに生産の途中――機械が動いて、糸が帽子になっていくその現場を見せていただきました。うかがったのは8月。ニットづくりがいちばん立て込む繁忙期のさなかに、無理を言っておじゃましてしまいました。

正直に言うと、ニット帽ができるまでのことを、僕はほとんど何も知りませんでした。この日、それが少しずつ形になっていく様子を目の前で見て、「1枚のニット帽って、こんなにたくさんの判断でできているのか」と、何度も声が出てしまいました。

前編では、このニット帽をつくってくださっている“つくり手”と、その手仕事に隠された工夫のお話をお届けします。

つくっているのは、ひとりの職人さん

今回のニット帽を手がけてくださっているのは、ひとりのベテラン職人さんです。

もともとは婦人物のセーターをつくる職人さんで、この道はもう20年以上。編み機に「どう編むか」を伝えるためのデータ(設計図のようなプログラム)を、専用のソフトで一からつくっていきます。そしてこのデータづくりが、実は工場の中でもこの方にしかできない仕事なのだそう。

「パソコンを触るのが好きなんですよ」と職人さんは笑います。データをつくって、機械で編んでみて、「あ、ここ違うな」と思ったらまたつくり直す。その繰り返しがずっと続くのに、「完成品を見るのが好きで。面白いから続けてるのかもしれないですね」と話してくれました。

つくっている方が「面白い」と思いながら、手をかけてつくっている。こんな方がつくった帽子なら、かぶる人もきっと気持ちよく使えるはず。そう思えて、なんだか嬉しくなってしまいました。

つなぎ目がない、ということ

カムリのニット帽は、「ホールガーメント」という編み方でつくられています。ざっくり言うと、縫い合わせるのではなく、筒の状態でまるごと編み上げてしまう方法です。だから帽子の内側に、縫い代やつなぎ目がありません。

その筒を折り返して、表と裏の二重に仕立てていく。表と裏で2種類の生地を使っているのに、肌に触れる裏側をやさしい素材にできて、しかもつなぎ目なく心地よい肌あたりになるのも、この編み方だからこそでした。ただ、この「表と裏を切り替える」工程は、見た目の印象よりずっと手間のかかる部分なのだそうです。

そして帽子のてっぺん。多くの場合は、機械で編んだままきゅっと締めて仕上げるのだそうです。でもここではひとつひとつ、人の手で閉じています。ぎゅっと締めて終わり、ではなく、きれいに、ぺったんと収まるように。かぶったときにてっぺんがもたつかない、あのすっきりした見た目は、この手間の先にあったんだと知りました。お伺いしたときは実際に職人さんに実演していただきました。

「誰も気づかない」ところにこそ

見学の中で、いちばん印象に残ったのがこの話です。

ニット帽はかぶると生地が伸びます。伸びると、表と裏を切り替える折り返しの位置がずれて、かぶり口のあたりがガタガタして見えてしまう。そこで職人さんは、その切り替え部分が歪まないよう、折り返しがちょうどいい位置に、しかも内側に隠れて収まるように、あらかじめ折り線まで仕込んで編んでいるのだそうです。外からは絶対に見えない部分です。

「これは計算しましたね。みんな気づかないと思いますけど」

本当に、言われなければ絶対に気づきません。でも、その“気づかない工夫”があるから、かぶったときに自然で気持ちがいい。誰の目にも触れないところまできれいに整える――見えないところにいちばん神経を使う、というものづくりの姿勢を、目の前で見せてもらった気がしました。

見えないところにまで、こんなにも手をかけてつくられていたカムリのニット帽。後編では、その1枚にどれだけの「時間」と「神経」がかけられているのか――品質へのこだわりと、つくれる数のお話をお届けします。

【ニット帽企画・第6回】1枚に、90分。― つくり手のこだわりを訪ねて(後編)



過去のブログは以下から^^

【ニット帽企画・第1回】フリーサイズはフリーじゃない。それはニット帽にも。

【ニット帽企画・第2回】被り心地を左右する、生地選びについて

【ニット帽企画・第3回】ニット帽のサンプルが届きました。

【ニット帽企画・第4回】3サイズ展開ではなく、4サイズ展開に広げました。

KATO

writing by

KATO

出身は兵庫県。最近買ったばかりのカメラを持ち歩いて妻と愛犬とのお出かけが趣味です。

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Version : 2025/02/12-34

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