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【ニット帽企画・第5回 (後編)】1枚に、90分。― つくり手のこだわりを訪ねて

2026.09.04

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前回(前編)は、カムリのニット帽をつくってくださっている職人さんと、その手仕事に隠れた“見えない工夫”のお話をお届けしました。

後編では、その1枚に、どれだけの時間と神経がかけられているのか。品質へのこだわりと、つくれる数のお話です。

1枚ずつ、確かめながら

実は最初のサンプルで少し気になる部分があり、ご相談したところ、職人さんはデータから丸ごとつくり直してくださいました。1サイズ分でも、それだけで2時間ほどかかる作業だそうです。

品質へのこだわりは、日々の生産の進め方にも表れていました。編みながら5枚ごとに手を止め、生地を引っ張って伸び具合を確認し、基準に満たないものはB品として分けていく。なぜ5枚ごとかというと、万一の不良を、大量に出てしまう前に見つけるためです。

というのも、編み目の大きさは、糸の巻き加減やその日の湿気で、わずかに変わってしまうのだそうです。少し目を離すと、目が細かくなったり、荒くなったり。「糸の変わり目なのか、糸巻きのテンションなのか……」と、原因を探りながら、その日その日の具合に合わせて数値を細かく調整していく。職人さんいわく、このカムリのニット帽は、扱う商品のなかでも特に気をつかう“厳しい方”なのだそうです。だから夜のあいだは機械を回しっぱなしにせず、朝また確認してから進める。1枚1枚を、そうやって見てくださっています。

時間をかけて、つくってくれています

数字の話も、正直にお聞きしました。

編み目の粗いニット(ローゲージ)なら、1枚10〜15分ほどで編み上がるものもあるそうです。でもカムリのニット帽は目が細かく(10ゲージ相当)、1枚におよそ60〜90分。同じ「ニットを編む」でも、かかる時間がまるで違います。

そしてこの帽子を編める機械は、工場に2台だけ。2台をフルに動かしても、1日につくれるのは15枚ほどです。つまり、たくさんの数を一気につくることができません。しかも針が細かいぶん、その目に埃が詰まりやすく、掃除やメンテナンスにも手がかかる。そんな中でもし不良が出てしまったら――だからこそ、さきほどの5枚ごとの確認なのだと、話がつながりました。「早めにご依頼いただいて、時間に余裕をもってお願いしています」という職人さんの言葉に、こちらが恐縮してしまいました。

編み上がった後も、洗いの工程があります。カムリのウールは洗えるように選んだ素材(ウォッシャブルウール)ですが、それでも洗う時間や量に気を配りながら、社内の洗い担当の方がていねいに。乾燥機は使わず、自然に乾かしていく。最後はスチームをあてて、形を整える。ここまで来て、ようやく1枚のニット帽になります。

1枚に、これだけの思いが

 

工場を出るころには、頭の中がいっぱいでした。

つなぎ目のない編み方、見えないところの計算、サイズごとの調整、5枚ごとの確認、洗いと仕上げ。その一つひとつに、職人さんの「気持ちよくかぶってほしい」という思いが詰まっていました。しかもそのデータは、こちらの職人さんにしかつくれない。この帽子は、本当に“この人の手”でできているのだと実感しました。

時間はかかります。数もたくさんはつくれません。でも、そのぶんの理由が、この日ぜんぶ腑に落ちました。もう少しで、みなさんにお届けできるところまで来ています。次回もどうぞ、お付き合いください。


過去のブログは以下から^^

【ニット帽企画・第1回】フリーサイズはフリーじゃない。それはニット帽にも。

【ニット帽企画・第2回】被り心地を左右する、生地選びについて

【ニット帽企画・第3回】ニット帽のサンプルが届きました。

【ニット帽企画・第4回】3サイズ展開ではなく、4サイズ展開に広げました。

【ニット帽企画・第5回 (前編)】その帽子は、ひとりの手でつくられていました。

 

KATO

writing by

KATO

出身は兵庫県。最近買ったばかりのカメラを持ち歩いて妻と愛犬とのお出かけが趣味です。

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